三国間貿易とは?仲介貿易との違い・外為法と税務の注意点をやさしく解説

三国間貿易とは? 仲介貿易との違い・外為法と税務の注意点 実務・手続き

三国間貿易とは、日本の会社が売買の当事者になりながら、貨物そのものは日本を経由せず外国から外国へ直接動く取引のことです。

たとえば、日本の会社がタイの工場から部品を買い、それをベトナムの取引先に売る。商流は日本を通りますが、モノはタイからベトナムへ直行します。輸送コストとリードタイムを大きく削れるため、海外に拠点や供給網を持つ企業が使う取引形態です。

一方で、日本の通関を通らないがゆえの落とし穴があります。統計に載らない、日銀への報告義務がある、外為法の規制対象になり得る、消費税の扱いが違う——このあたりを知らずに始めると、あとから慌てることになります。

ここではジェトロ・財務省・国税庁などの公的情報をもとに、三国間貿易の実務上の注意点を整理します。貿易全体の流れは貿易取引の流れとは?取引先探しから決済までをご覧ください。

三国間貿易とは|仲介貿易との関係

まず用語を整理します。法律上の呼び名は「仲介貿易」です。

ジェトロによれば、仲介貿易は外国為替及び外国貿易法(外為法)第25条第4項において「外国相互間の貨物の移動を伴う貨物の売買、貸借または贈与に関する取引」と規定されています。そして同ジェトロの解説は、「法律用語では『仲介貿易』が使われますが、実際の国際ビジネスでは『三国間貿易』という言い方もよく使われます」としています。

つまり、三国間貿易=仲介貿易と考えて差し支えありません。行政の書類や許可申請の場面では「仲介貿易」、日常の商談では「三国間貿易」が使われる、という違いです。

ジェトロの別の解説では、「二国間の貿易取引に製造や船積みを伴わない第三国の当事者が輸出者として参加し、複数の取引や商流がかかわる一方で、物流は二国間のみに発生する貿易の形態」とも説明されています。商流は3か国、物流は2か国——これが三国間貿易の骨格です。

商社が担う代表的な取引形態でもあり、厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)も、商社営業の仕事について「我が国を経由しない外国と外国との第三国間取引も行っている」と記しています(商社の仕事内容とは?)。

三国間貿易のメリット

  • 輸送コストが下がる:日本を経由しないぶん、輸送距離と回数が減ります。
  • リードタイムが短くなる:積み替えや日本国内の保管・通関の時間が発生しません。
  • 日本での通関手続きが不要:日本の輸出入申告そのものが発生しません。
  • 拠点を増やさずに海外間の商流を握れる:現地法人がなくても、日本の本社が売買の当事者として利益を取れます。

とくに、東南アジア域内で調達し、東南アジア域内で売る——といった商流では、日本を経由する意味がありません。効率だけを見れば、三国間貿易は合理的な選択です。

外為法上の注意点|「原則自由。ただし許可が必要な場合がある」

もっとも注意すべきなのがここです。

ジェトロは「わが国では、仲介貿易を行うことは原則自由」としたうえで、次の場合には事前に経済産業大臣の許可が必要とされている、と説明しています。

  1. 輸出貿易管理令別表第1の1の項(武器)に該当する貨物に関する取引
  2. 同別表第1の2の項から16の項に該当する貨物で、船積地域と仕向地のいずれもが輸出令別表第3に掲げる地域以外であって、核兵器等の開発等に用いられるおそれがあるものとして仲介貿易取引おそれ省令の要件に該当する場合、または経済産業大臣から許可申請をすべき旨の通知(インフォーム)を受けた場合

規制が強化された経緯も公表されています。2004年4月に採択された国連安全保障理事会決議第1540号で、仲介貿易取引や積替再輸出の適切な管理が義務付けられ、これを踏まえて2007年6月から輸出令・外為令の改正で規制が強化されました。また2006年10月には、北朝鮮から第三国への仲介貿易取引を禁止する措置が発動されています。

さらに2009年11月施行の外為法改正により、それまで「売買」のみが対象だったところに、貨物の「貸借」「贈与」も追加されました。

「日本の税関を通らないから、日本の法律は関係ない」というのは誤りです。日本に居住する者が当事者になる以上、外為法の規制は及びます。安全保障貿易管理の全体像は外為法とは?輸出入で押さえるべき規制輸出入の規制・禁止品目をご覧ください。

なお、制度の詳細や条文の解釈は、必ず経済産業省の最新資料および専門家に確認してください。本記事の条番号はジェトロの記述に依拠しています。

統計に載らない、でも報告義務はある

三国間貿易の独特な点が、統計上の扱いです。

財務省は、貿易統計について「我が国の税関における貨物の通関という観点に立ち、物の輸出入を物理的に捕らえ、税関を通過した時点(関税境界)を計上する時期・範囲としています」と説明しています。つまり、関税境界を越えない三国間貿易の貨物は、日本の貿易統計には計上されません。

同じ財務省の解説には、わかりやすい例が挙げられています。日本がアメリカ製の人工衛星を購入してアメリカで打ち上げる場合、「人工衛星は関税境界を越えませんので、貿易統計には計上されません」(国際収支統計には計上される)。

一方、日本銀行は国際収支統計の貿易収支について、主な取引の内容を「財貨の輸出入や仲介貿易」としています。通関統計には載らないが、国際収支統計には載る——この二重構造が、三国間貿易の見えにくさを生んでいます。

そしてここが実務上の落とし穴です。ジェトロは次のように注意を促しています。

本邦で通関手続きを伴う輸出代金および輸入代金については支払い報告が免除されますが、仲介貿易(三国間貿易)は本邦において通関手続きを経ないことになりますので、報告書免除の対象にはなりません

つまり、1回あたりの支払・支払の受領が3,000万円を超える場合、日本銀行への「支払または支払の受領報告書」の提出義務が発生します(外為法第55条第1項、外為令第18条の4)。通常の輸出入なら通関データがあるため免除されますが、三国間貿易にはその通関データがないためです。日本銀行側も「居住者が非居住者との間で行った決済について、1回の受払が3千万円相当額を超える場合に報告を受けます」としています。

「通関がないから手続きが楽」ではありません。通関がないぶん、別の報告が必要になります。

書類と決済の実務

書類の書き替えが必要になる

貨物がB国からC国へ直接動くのに、請求書は日本の会社が出す。この食い違いが、書類上の問題を生みます。

ジェトロは、「B国で発行された船荷証券や原産地証明書の書き替えが必要となるケースが発生します。このような場合は、船荷証券については船会社に、原産地証明書については商工会議所にご相談ください」としています。

実務では船荷証券の差し替えを「スイッチB/L」と呼ぶことがありますが、これは業界の慣用表現で、公的な定義が置かれた用語ではありません。手続き自体は船会社の対応可否に依存するため、取引を組む前に船会社へ確認するのが確実です。船荷証券そのものは船荷証券(B/L)とは、原産地証明書は原産地証明書とはで解説しています。

FTA/EPAの特恵関税を狙うなら「直送」の条件に注意

三国間貿易で関税メリットを見込む場合、見落とされがちな条件があります。ジェトロは、FTA/EPAの特恵関税の適用には輸出国から輸入国への直送が条件であり、第三国を経由する場合は通し船荷証券(Through B/L)か、中継国で発行される非加工証明書(Certificate of Non-Manipulation)が必要になる、としています。

「三国間にすれば関税が安くなる」と単純には言えません。関税の基本は関税とは?種類・課税の仕組み・計算方法をご覧ください。

信用状(L/C)を使う場合の段取り

ジェトロは、三国間貿易でL/Cを使う際の実務的な助言として、次の2点を挙げています。

  • 売買契約では船積み期日をできるだけ長期間に設定しておき、十分余裕のある信用状を開設してもらうこと
  • 自社と仕入先の決済条件も信用状取引になっていると船積書類の到着が遅れがちになるため、送金決済などとし、船積書類を仕入先から最終買主へ直接送付してもらう方法も一策

信用状の国際ルールはICCが制定するUCP600(2007年改訂)で、信用状独立の原則(第4条)、書類取引の原則(第5条)が定められています。銀行は書類だけを見て支払う——このルールがあるからこそ、書類の差し替えが実務上の急所になります(信用状(L/C)とは)。

リスクと保険

三国間貿易では、自社の目の届かない場所でモノが動きます。現物を確認できないまま代金だけが動くため、次のリスクが高まります。

  • 品質・数量が契約どおりか、自社で確認しにくい
  • 買主が支払わなかった場合、貨物を押さえる手立てが遠い
  • 相手国の法規制や外貨規制の影響を直接受ける

リスクヘッジの手段として、ジェトロは貿易保険の付保を挙げています。日本貿易保険(NEXI)の「貿易一般保険」は仲介貿易を対象に含んでおり、個別保険には〈輸出契約・仲介貿易契約〉の様式が用意されています。制度として想定されている、ということです(貿易保険とは貿易トラブル事例と対策)。

なお、相手国側の規制にも注意が必要です。たとえば中国では、外貨管理上、三国間貿易の外貨決済にあたって銀行が無記名式B/Lなどの権利証書の提示を求めることが義務付けられており、企業の分類区分によっては三国間貿易の外貨支払・受領手続き自体ができない場合があるとジェトロは解説しています。国ごとに実務の可否が変わる点は必ず事前に確認してください。

消費税の扱い

国税庁のタックスアンサー「No.6210 国外取引」は、明確にこう述べています。

事業者が国外において購入した資産を国内に搬入することなく他へ譲渡するいわゆる三国間貿易の場合は、国外に所在する資産の譲渡であり国外取引に該当しますので、その経理処理のいかんに関わらず課税の対象とはなりません

消費税の内外判定は「その譲渡または貸付けが行われる時においてその資産が所在していた場所」で行われます。三国間貿易では資産が国外にあるため、国外取引=不課税という扱いです。

ここで注意したいのは、「不課税」と「輸出免税(0%)」は別物だということです。輸出免税は課税取引でありながら税率が0%になる扱いですが、三国間貿易はそもそも課税の対象外です。仕入税額控除の計算などに影響し得るため、実際の申告にあたっては必ず顧問税理士にご確認ください。

なお法人税については、日本は内国法人に対して「所得の源泉が国内であろうと国外であろうとすべて課税の対象とする全世界所得課税主義」を採用しています。三国間貿易で得た利益も、当然に課税所得に含まれます。

まとめ

三国間貿易とは、商流は日本を通りながら、貨物は外国から外国へ直接動く取引です。法律用語では「仲介貿易」と呼ばれ、外為法第25条第4項に規定されています。

輸送コストとリードタイムを削れる合理的な形態ですが、日本の通関を通らないことが、そのまま注意点になります。

  • 外為法上は原則自由だが、武器該当貨物や、核兵器等の開発等に用いられるおそれがある場合・インフォームを受けた場合は許可が必要とされている
  • 貿易統計には計上されない一方、1回3,000万円超の受払は日本銀行への報告義務がある
  • 船荷証券・原産地証明書の書き替えが必要になることがある
  • FTA/EPAの特恵関税には直送条件があり、通し船荷証券や非加工証明書が要る
  • 消費税は国外取引として不課税(輸出免税とは別)

「通関がないから簡単」ではなく、「通関がないから別の手続きが要る」取引です。最初の1件は、船会社・銀行・税理士・(該非判定は)専門家に確認しながら組み立てることをおすすめします。

よくある質問(FAQ)

Q. 三国間貿易と仲介貿易は違うものですか?

A. 実質的に同じものです。法律用語では「仲介貿易」が使われ、外為法第25条第4項に「外国相互間の貨物の移動を伴う貨物の売買、貸借または贈与に関する取引」と規定されています。実際のビジネスの場では「三国間貿易」という言い方がよく使われます。

Q. 三国間貿易に許可は必要ですか?

A. 原則は自由です。ただし、武器に該当する貨物に関する取引や、規制対象貨物で核兵器等の開発等に用いられるおそれがある場合、経済産業大臣からインフォームを受けた場合には、事前に許可が必要とされています。該当するかどうかの判断は専門家にご相談ください。

Q. 三国間貿易に消費税はかかりますか?

A. 国税庁は、三国間貿易は国外に所在する資産の譲渡であり国外取引に該当するため、経理処理のいかんに関わらず課税の対象とはならない、としています。輸出免税(税率0%の課税取引)とは扱いが異なるため、申告にあたっては顧問税理士にご確認ください。


参考・出典

  • ジェトロ「仲介貿易(三国間貿易)における留意点|貿易・投資相談Q&A」 https://www.jetro.go.jp/world/qa/04J-120104.html
  • ジェトロ「三国間貿易の留意点:中国|貿易・投資相談Q&A」 https://www.jetro.go.jp/world/qa/04C-140101.html
  • ジェトロ「信用状取引の特徴および信用状で使用される用語の解釈:日本|貿易・投資相談Q&A」 https://www.jetro.go.jp/world/qa/04A-A10938.html
  • ジェトロ「ASEAN域内の特恵関税を受けるための手続きおよび規則|貿易・投資相談Q&A」 https://www.jetro.go.jp/world/qa/04A-011157.html
  • 財務省「類似統計との相違点(国際収支統計)」 https://www.mof.go.jp/policy/international_policy/reference/balance_of_payments/difference.html
  • 日本銀行「『国際収支関連統計(IMF国際収支マニュアル第6版ベース)』の解説」 https://www.boj.or.jp/statistics/outline/exp/exbpsm6.htm
  • 国税庁 タックスアンサー「No.6210 国外取引」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6210.htm
  • 日本貿易保険(NEXI)「貿易一般保険個別保険〈輸出契約・仲介貿易契約〉の様式」 https://www.nexi.go.jp/form/individual/index.html
  • 経済産業省 安全保障貿易管理「仲介貿易・技術取引規制」 https://www.meti.go.jp/policy/anpo/anpo05.html

※本記事は公開日時点の公的情報にもとづく一般的な解説です。法令の該非判定・許可の要否、および税務上の取扱いは個別事情によって異なります。実際の取引にあたっては、必ず所管官庁および専門家にご確認ください。

(公開日:2026-08-26/貿易ラボ編集部)

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