インコタームズとは?2020年版11規則とFOB・CIFの違いを初心者向けにやさしく解説

実務・手続き

最終更新日: 2026年6月26日 ※本記事は公開時点の公的情報をもとに作成しています。インコタームズは改定されることがあり、各規則の細かな取り決めは正文(国際商業会議所の公式テキスト)が優先されます。実際の契約にあたっては最新版・正文をご確認ください。


海外との取引の見積書を見ると、「FOB Yokohama」「CIF Los Angeles」といった見慣れないアルファベットが並んでいます。これらはインコタームズと呼ばれる貿易のルールで、意味がわからないと「どこまでの費用がこの金額に含まれるのか」「荷物が事故にあったら誰の責任か」が読み取れません。

この記事では、インコタームズとは何か、何を決めるルールなのか、そして2020年版の11規則とFOB・CIFなど代表条件の違いを、JETRO(日本貿易振興機構)などの公式情報をもとにやさしく解説します。貿易の全体像から知りたい方は総合ガイド「貿易とは」(P0)もあわせてご覧ください。

インコタームズとは

インコタームズ(Incoterms)とは、国際商業会議所(ICC)が定めた、貿易取引における費用と危険の負担範囲を表す国際的なルールです。「International Commercial Terms」を略した言葉で、FOBやCIFといった3文字の略語の集まりとして使われます。

国が違えば商習慣も法律も異なります。そこで「この条件ならここまでは売り手、ここからは買い手が負担する」という共通のものさしを定めておくことで、世界中の取引相手と同じ理解のもとで売買できるようにしたものがインコタームズです。

インコタームズで決まる2つのこと

インコタームズはたくさんの略語があって難しそうに見えますが、核心はとてもシンプルです。どの条件も、結局は次の2つの分岐点を決めているだけだと考えると、一気に理解しやすくなります。

一つめは、費用負担の分岐点です。商品代金のほかに、輸送費・保険料・輸出入の手続き費用など、どこまでを売り手が負担し、どこからを買い手が負担するのかを決めます。

二つめは、危険負担(リスク)の分岐点です。輸送中に商品が壊れた・なくなった場合に、どの時点までが売り手の責任で、どこからが買い手の責任になるのかを決めます。

この「費用」と「危険」がどこで売り手から買い手へ移るのか——それを示すのがインコタームズの本質です。なお、インコタームズは費用と危険の分担を決めるルールであり、商品の所有権がいつ移るか(所有権の移転)は別の問題で、インコタームズでは定めていない点に注意してください。

インコタームズ2020が現行版

インコタームズは時代に合わせて改定されており、現在の最新版は「インコタームズ2020」です(2020年1月発効)。それ以前は2010年版が使われていました。

2020年版での主な変更点としては、従来の「DAT」が「DPU(仕向地荷卸込持込渡し)」に名称・内容変更されたこと、CIFとCIPで売り手が手配する貨物保険の補償水準に差が設けられたこと(CIFは最小限の補償、CIPはより手厚い補償)などが挙げられます(出典:JETRO「インコタームズ2020」)。

契約では「FOB Yokohama Incoterms 2020」のようにどの版かを明記するのが実務の基本です。

インコタームズ2020の11規則の全体像

インコタームズ2020には11の規則があり、使える輸送手段によって大きく2つに分類されます(出典:JETRO「インコタームズ2020」)。

すべての輸送手段に使える7規則

船・飛行機・トラック・鉄道など、どんな輸送手段でも使える規則です。コンテナ輸送や航空輸送にはこちらが適しています。

略語名称(日本語の通称)おおまかな意味
EXW工場渡し売り手の工場・倉庫で引き渡す。買い手の負担が最も大きい
FCA運送人渡し指定地で買い手が指定した運送人に引き渡す
CPT輸送費込み仕向地までの輸送費を売り手が負担(危険は引渡時に移転)
CIP輸送費保険料込みCPTに保険料が加わる(保険は手厚い水準)
DAP仕向地持込渡し仕向地で荷卸し前の状態で引き渡す
DPU仕向地荷卸込持込渡し仕向地で荷卸しまで売り手が行う
DDP関税込持込渡し輸入通関・関税まで売り手が負担。売り手の負担が最も大きい

海上・内陸水路輸送のみに使える4規則

船による輸送(在来船など)に使われる、歴史の古い規則です。

略語名称(日本語の通称)おおまかな意味
FAS船側渡し船の横(埠頭)で引き渡す
FOB本船渡し商品を本船の船上に積んだ時点で引き渡す
CFR運賃込みFOBに仕向港までの運賃が加わる
CIF運賃保険料込みCFRに保険料が加わる

代表的な条件の違い(EXW・FOB・CFR・CIF・DDP)

11規則すべてを覚える必要はありません。初心者がまず押さえたいのは、よく出会う代表条件を「売り手の負担が小さい順」に並べて、何が違うのかをつかむことです。

条件売り手が負担する費用の範囲危険が買い手へ移る時点
EXW(工場渡し)自社の工場・倉庫で渡すまで工場・倉庫で引き渡した時点
FOB(本船渡し)商品を本船に積み込むまで本船の船上に積んだ時点
CFR(運賃込み)FOB+仕向港までの運賃本船の船上に積んだ時点
CIF(運賃保険料込み)CFR+海上保険料本船の船上に積んだ時点
DDP(関税込持込渡し)輸入通関・関税まで含めほぼすべて仕向地で引き渡した時点

EXWは売り手が「工場で渡すだけ」で最も負担が軽く、その分、輸送や通関の手間は買い手に大きくかかります。反対にDDPは、輸入の関税まで売り手が負担する最も負担の重い条件です。どの輸送モードを使うかによって適する条件も変わります。海上輸送と航空輸送の違いは「海上輸送と航空輸送の違い」で解説します。

FOBとCIFの違い

最もよく比較されるのがFOBとCIFです。この2つは、危険が買い手に移る時点は同じで、どちらも「商品を本船の船上に積んだ時点」です。

違うのは売り手が負担する費用の範囲です。FOBは本船に積むところまでで、その後の海上運賃や保険は買い手が手配・負担します。一方CIFは、仕向港までの海上運賃(CFR相当)に加えて海上保険料まで売り手が負担します。つまり「危険の分岐点は同じでも、費用をどこまで売り手が見るか」が両者の差だと整理できます。

インコタームズと関税・決済の関係

インコタームズは、関税や決済とも深く関わります。

関税の計算では、商品代金に運賃・保険料を加えた課税価格(CIF価格)が基準になります。そのため、CIF条件のように運賃・保険料が売り手側で価格に含まれているかどうかは、関税の計算にも影響します。関税の仕組みは「関税とは」(B3)で解説しています。

また、インコタームズは費用と危険の分担を決めるものなので、代金をいつ・どうやって支払うかという決済条件とは別に取り決めます。実務では、インコタームズと決済条件を組み合わせて契約します。決済方法は「貿易決済の方法」で解説します。

使うときの注意点

最後に、実務での注意点を3つ挙げます。

第一に、版(バージョン)を必ず明記すること。「FOB Yokohama Incoterms 2020」のように、地名と版をセットで書きます。第二に、前述のとおり所有権の移転はインコタームズでは決まらないため、必要に応じて契約書で別途定めます。第三に、各規則の細かな取り決めは正文(ICCの公式テキスト)が優先されます。本記事は全体像をつかむための解説であり、実際の契約では最新版・正文を確認してください。

まとめ

インコタームズとは、国際商業会議所(ICC)が定めた、貿易取引の費用と危険の負担範囲を表す国際ルールです。ポイントを整理すると、次のとおりです。

  • インコタームズは「費用の分岐点」と「危険の分岐点」の2つを決めるルール。
  • 現行版はインコタームズ2020で、11規則が「すべての輸送手段に使える7規則」と「海上・内陸水路のみの4規則」に分かれる。
  • FOBとCIFは危険の移転時点(本船船上)は同じで、売り手が負担する費用の範囲が違う。
  • 所有権の移転は別問題。契約では版を明記し、細部は正文を確認する。

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参考・出典

  • JETRO 貿易・投資相談Q&A「インコタームズ2020」 https://www.jetro.go.jp/world/qa/04C-070304.html
  • JETRO ビジネス短信「国際商業会議所、インコタームズ2020を発表」 https://www.jetro.go.jp/biznews/2019/10/017b1010f52776cb.html
  • JETRO「貿易実務の基礎(貿易の関係者、輸出入の流れ、インコタームズ)」
  • 国際商業会議所(ICC)インコタームズ2020(各規則の正文)

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