通関士とは、通関士試験に合格し、勤務先の通関業者を通じて財務大臣の「確認」を受けたうえで、通関業者の通関業務に従事する人のことです。根拠となる法律は通関業法(昭和42年法律第122号)で、輸出入申告書などの通関書類の内容を審査し、記名することが法律上の役割として定められています。
「通関士の資格を取れば、どこでも通関士と名乗れるの?」「試験はどのくらい難しい?」「年収は?」——貿易業界への就職・転職を考えている方や、物流・貿易事務の新人の方からよく挙がる疑問です。実は、試験に合格しただけでは法律上の「通関士」ではありません。ここが通関士という資格を理解するうえでいちばん大事なポイントです。
この記事では、税関とe-Gov法令検索の一次情報をもとに、通関士の定義と通関業者との違い、仕事内容、2026年(第60回)通関士試験の日程・科目・合格基準、過去5年の受験者数と合格率、そして厚生労働省のjob tag(職業情報提供サイト)の賃金データまでを整理します。通関という手続きそのものの流れは通関とは?輸出入手続きの流れ・必要書類で解説しています。
通関士とは|通関業法で定められた「通関書類の審査役」
法律上の定義
通関業法第2条第4号は、通関士を「第三十一条第一項の確認を受けて通関業者の通関業務に従事する者」と定義しています。分解すると、次の3つがそろって初めて通関士になります。
- 通関士試験に合格している(第23条第1項「通関士になろうとする者は、通関士試験に合格しなければならない」)
- 勤務先の通関業者が財務大臣に届け出て、その人について「確認」を受けている(第31条第1項)
- その通関業者の通関業務に実際に従事している
税関のカスタムスアンサー(税関手続FAQ)も、通関士を「国家試験である通関士試験に合格した者のうち、勤務先の通関業者の申請に基づく財務大臣の確認を受け、通関業務に従事する者」と説明しています。
なぜ通関士が必要なのか
税関によると、通関士制度は、関税の申告納税制度への移行に伴い昭和42年に通関業法が制定された際に導入されました。輸出入者が自ら税額を申告する仕組みのもとでは、税関に出される申告書類が正しいことが、適正で迅速な通関の前提になります。そこで、専門的な知識と経験を持つ通関士を原則として営業所ごとに置き、書類の内容を審査させる仕組みが設けられています。
通関業法第1条も、法律の目的として「通関業を営む者についてその業務の規制、通関士の設置等必要な事項を定め」ることで、「関税の申告納付その他貨物の通関に関する手続の適正かつ迅速な実施を確保すること」を掲げています。
押さえておきたい条文
| 条文(通関業法) | 内容(要旨) |
|---|---|
| 第2条第4号 | 通関士=第31条第1項の確認を受けて通関業者の通関業務に従事する者 |
| 第13条 | 通関業者は、通関業務を行う営業所ごとに通関士を置かなければならない(取扱貨物が一定の種類に限られる営業所は例外) |
| 第14条 | 政令で定める通関書類は、通関士に内容を審査させ、記名させなければならない |
| 第23条 | 通関士になるには通関士試験に合格しなければならない。試験科目は3科目 |
| 第24条 | 実務経験による試験科目の一部免除 |
| 第25条 | 合格者は、どの税関の管轄区域内においても通関士となる資格を有する |
| 第31条 | 通関業者が届け出て、財務大臣の確認を受ける |
| 第32条 | 確認を受けた通関業者の通関業務に従事しなくなったときなどは、通関士でなくなる |
| 第40条第2項 | 通関士でない者は、通関士という名称を使用してはならない |
通関士と通関業者の違い、働く場所
通関業者は「事業者」、通関士は「人」
混同されやすいのが「通関業者」です。通関業者は、財務大臣の許可(通関業法第3条第1項)を受けて通関業を営む事業者のことです。これに対して通関士は、その通関業者に所属して通関業務を担う人を指します。
| 項目 | 通関業者 | 通関士 |
|---|---|---|
| 何者か | 通関業を営む事業者 | 通関業者の通関業務に従事する人 |
| 必要なもの | 財務大臣の許可(第3条) | 試験合格+財務大臣の確認(第23条・第31条) |
| 主な義務 | 営業所ごとの通関士の設置(第13条)、料金の掲示(第18条)、帳簿・書類の保存(第22条)など | 通関書類の審査・記名(第14条)、名義貸しの禁止(第33条)など |
| 共通の義務 | 秘密を守る義務(第19条)、信用失墜行為の禁止(第20条) | 同左 |
| 数(税関公表) | 988社・営業所2,042か所(2025年4月1日現在) | 8,372人(2026年4月1日現在) |
なお、通関業法でいう「通関業務」は、「他人の依頼によつてする」通関手続の代理・代行や通関書類の作成などを指します(第2条第1号)。輸出入者が自社の貨物について自ら税関に申告する場合は、この「通関業務」にはあたりません。
通関士はどこで働いているか
定義上、「通関士」として働く場所は通関業者です。税関によると、通関業者のほとんどは通関業のほかに港湾運送事業、道路運送事業、海上運送事業、倉庫業等を兼業しています。job tagも、多くの通関業者が港湾運送業や道路運送業、倉庫業、航空貨物代理店業などを兼業していること、通関士は輸出入の貨物が多く集まる東京、大阪、横浜などの税関の近くに集中していることを挙げています。
実務の世界では、こうした会社は「乙仲(海貨業者)」「フォワーダー」「航空貨物代理店」などとも呼ばれます。それぞれの役割と違いはフォワーダー・乙仲とは?で整理しています。
税関が公表している税関別の通関業従業者数(2026年4月1日現在)は次のとおりです。
| 税関 | 通関士 | 通関士以外の通関業務従業者 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 東京 | 2,585 | 2,599 | 5,184 |
| 大阪 | 1,724 | 1,510 | 3,234 |
| 横浜 | 1,182 | 1,202 | 2,384 |
| 名古屋 | 967 | 949 | 1,916 |
| 神戸 | 891 | 811 | 1,702 |
| 門司 | 677 | 880 | 1,557 |
| 函館 | 197 | 355 | 552 |
| 長崎 | 89 | 175 | 264 |
| 沖縄 | 60 | 92 | 152 |
| 計 | 8,372 | 8,573 | 16,945 |
通関業務に従事する16,945人のうち、通関士は8,372人と、およそ半分です。通関士の数は2017年の7,848人から増え、2023年の8,491人を最多に、2026年は8,372人となっています(各年4月1日現在)。
合格しても「通関士」と名乗れないケース
注意したいのは、通関士試験に合格しても、通関業者の通関業務に従事して確認を受けていなければ、法律上の「通関士」ではないという点です。通関業法第40条第2項は「通関士でない者は、通関士という名称を使用してはならない」と定めており、違反した者は30万円以下の罰金の対象になります(第44条第3号)。
また第32条第1号により、確認を受けた通関業者の通関業務に従事しなくなったとき(退職や異動など)は通関士でなくなります。別の通関業者で通関士として働くには、その通関業者があらためて届出をし、確認を受ける必要があります(第31条第1項)。
一方で、第25条は、合格者は「どの税関の管轄区域内においても、通関士となる資格を有する」と定めています。通関業者以外の会社に勤めている合格者が資格を表すときは、「通関士試験合格」と表現するのが正確です。
通関士の仕事内容
法律が定める中心業務:通関書類の審査と記名
通関士の中心業務は、通関業法第14条にもとづく通関書類の審査と記名です。審査が必要な書類は、通関業法施行令第6条で次のように定められています。
| 審査・記名が必要な通関書類(施行令第6条) | 主な書類 |
|---|---|
| 法第2条第1号イ(1)の(一)〜(五)の申告・申請に係る申告書・申請書 | 輸出申告書、輸入申告書、船用品・機用品の積込みの申告書、保税地域に外国貨物を置くことなどの承認申請書 など |
| 法第2条第1号イ(2)の不服申立てに係る不服申立書 | 関税法等による処分についての不服申立書 |
| 関税法第7条の2第1項に規定する特例申告書 | 特例申告書 |
| 関税法施行令に規定する修正申告書・更正請求書 | 納税申告の誤りを正す修正申告書、税額の減額などを求める更正請求書 |
job tagも、通関士は「輸出入申告書、船(機)用品積込承認申告書、関税修正申告書、関税更正請求書、不服申立書等」の通関書類について、その内容を審査し、申告等を行うと説明しています。
通関業務の全体像
通関業法第2条第1号は「通関業務」を、他人の依頼によって行う次の事務と定めています。通関士はこれらの業務に従事します。
- 税関への輸出入申告などの通関手続(関税の確定・納付の手続を含む)の代理・代行
- 関税法などにもとづく処分について、税関長または財務大臣に対して行う不服申立ての代理・代行
- 通関手続、不服申立て、税関の調査・検査・処分について、税関に対して行う主張・陳述の代理・代行
- 通関書類の作成
さらに、税関とのやりとりに関する規定もあります。第15条は、通関業者が行った納税申告について、関税率表の適用上の所属(いわゆる税番)や課税価格についての解釈の相違から関税額を増やす更正をする場合に、税関長が通関業者に意見を述べる機会を与えなければならないと定めています。第16条は、税関が貨物の検査を行うときに、通関業者またはその従業者の立会いを求めるため通知することを定めています。
job tagに見る具体的なタスク
job tagは、通関士のタスクとして次のようなものを挙げています(実施率はjob tagの調査による)。
| 主なタスク(job tagより) | 実施率 |
|---|---|
| 輸出入者からインボイスやパッキングリストなどの通関関係書類を入手する | 100.0% |
| 輸出入の際に、国内関係法令に基づく許可や承認が必要かを調べる | 100.0% |
| 品名・数量・価格などにより適用税番・税率を決定し、課税価格の適否を確認する | 100.0% |
| 輸出入物品を税区分に応じたHSコードに分類する | 100.0% |
| 税関での審査や検査の結果を受け、必要な事項を税関へ出向いて説明する | 96.6% |
| 輸出入申告書を作成して税関へ申告する | 93.1% |
| 輸出入通関に伴う関税分類、評価申告の指導をする | 93.1% |
| 輸出入物品の配送を手配する | 86.2% |
| 税関の事後調査への立会いをしたり、相談を受ける | 86.2% |
| 保税倉庫を管理する | 75.9% |
配送の手配や保税倉庫の管理まで含まれているのは、通関業者が通関業務に先行・後続する「関連業務」を行えるためです(通関業法第7条)。税番の決め方はHSコードとは、輸出入に許可・承認が必要な品目は輸出入の規制・禁止品目で詳しく解説しています。
通関士試験の概要(2026年・第60回)
通関士試験は、財務大臣が決定する問題により、各税関長が毎年1回以上行う国家試験です(通関業法第27条)。試験委員が問題の作成と採点を行います(第28条)。
日程
| 項目 | 第60回(令和8年=2026年) |
|---|---|
| 試験公告 | 2026年7月1日 |
| 受験申込受付 | 2026年7月21日(火)〜8月4日(火) |
| 試験日 | 2026年10月4日(日) |
| 合格発表(税関ホームページに合格者の受験番号を掲載) | 2026年11月10日(火)予定 |
| 官報掲載 | 2026年11月20日(金)予定 |
執筆時点(2026年10月2日)で、第60回の受験申込はすでに締め切られています。次回(第61回)の日程はまだ公表されていませんが、直近3回(第58〜60回)はいずれも、7月1日に試験公告、7月下旬から8月上旬に受験申込受付、10月上旬の日曜日に試験という日程でした。最新の日程は税関の「通関士試験」ページで確認してください。
受験資格・受験手数料・出願方法
- 受験資格:学歴、年齢、経歴、国籍等の制限はなく、誰でも受験できます。
- 受験手数料:書面で出願する場合は3,000円(収入印紙)、NACCS(輸出入・港湾関連情報処理システム)で出願する場合は2,900円です(通関業法施行令第12条)。受験しなかった場合も還付されません(通関業法第26条第2項)。
- 出願方法:第60回から、書面による出願の受付は原則郵送のみになりました。NACCSでも出願できますが、受験票は別途書面で提出します。
- 試験地:北海道、宮城、新潟、東京、神奈川、静岡、愛知、大阪、兵庫、広島、福岡、熊本、沖縄。全国同時に行われ、どの試験地でも受験できます(願書は受験地を管轄する税関へ提出)。
試験科目・時間・配点
試験科目は通関業法第23条第2項で3科目と定められています。第60回の受験案内による時間と配点は次のとおりです。
| 試験科目 | 試験時間 | 配点の合計 | 主な出題範囲 |
|---|---|---|---|
| 通関業法 | 9:30〜10:20 | 45点 | 通関業の許可、通関業者の義務、通関士など |
| 関税法、関税定率法その他関税に関する法律及び外国為替及び外国貿易法(同法第6章に係る部分に限る) | 11:00〜12:40 | 60点 | 関税法、関税定率法、関税暫定措置法など。外為法は第6章に限る |
| 通関書類の作成要領その他通関手続の実務 | 13:50〜15:30 | 45点 | NACCSを使った輸出申告・輸入申告の問題(各1問)、計算問題など |
すべての科目が筆記(マークシート方式)です。電卓は「通関書類の作成要領その他通関手続の実務」の試験時間のみ使用できます。出題範囲は、2026年7月1日現在で施行されている法令・告示・通達です。
合格基準
合格するには、3科目すべてで合格基準を満たす必要があります。合格基準は事前には公表されず、合格発表の際に公表されます。過去5回の合格基準は次のとおりです。
| 回(実施年) | 通関業法 | 関税法等 | 通関実務 |
|---|---|---|---|
| 第55回(2021年) | 満点の60%以上 | 満点の60%以上 | 満点の60%以上 |
| 第56回(2022年) | 満点の60%以上 | 満点の60%以上 | 満点の60%以上 |
| 第57回(2023年) | 満点の60%以上 | 満点の60%以上 | 満点の60%以上 |
| 第58回(2024年) | 満点の60%以上 | 満点の55%以上 | 満点の60%以上 |
| 第59回(2025年) | 満点の60%以上 | 満点の60%以上 | 満点の60%以上 |
実務経験による科目免除
通関業者や税関などでの実務経験があると、申請により試験科目の一部が免除されます(通関業法第24条)。
| 条件(通算の従事期間) | 免除される科目 | 受験する科目 |
|---|---|---|
| 通関業者の通関業務、または官庁における関税その他通関に関する事務に15年以上 | 関税法等、通関実務 | 通関業法のみ |
| 通関業者の通関業務、または官庁における通関事務に5年以上 | 通関実務 | 通関業法、関税法等 |
ただし、特別の判断を要しない機械的事務(自分の判断を要しない単なるパソコンへの入力、使送、貨物の内容点検など)は期間に含まれません(通関業法施行令第11条、第60回受験案内)。一度交付された「通関士試験科目の一部免除通知書」に有効期限はありません。
通関士試験の難易度と合格率(過去5年)
受験者数・合格者数・合格率
税関が公表している過去5回の結果は次のとおりです。
| 回(実施年) | 願書提出者数 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
|---|---|---|---|---|
| 第55回(2021年) | 8,972人 | 6,961人 | 1,097人 | 15.8% |
| 第56回(2022年) | 8,194人 | 6,336人 | 1,212人 | 19.1% |
| 第57回(2023年) | 8,086人 | 6,332人 | 1,534人 | 24.2% |
| 第58回(2024年) | 8,024人 | 6,135人 | 759人 | 12.4% |
| 第59回(2025年) | 8,205人 | 6,322人 | 954人 | 15.1% |
(出典:税関「第59回通関士試験の結果について」の推移表。合格率=合格者数÷受験者数)
5年間の合格率は12.4%〜24.2%で、年によって大きく動いています。5回分を合計すると、受験者32,086人に対して合格者5,556人で、合格率は約17.3%です(編集部計算)。また、願書を出した人のうち実際に受験した人の割合(受験率)は、第59回で77.1%でした。
さらに長い目で見ると、第1回(1967年)から第59回までの累計では、受験者353,124人に対して合格者54,943人、合格率15.6%です。平成以降で最も高かったのは第36回(2002年)の28.6%、最も低かったのは第40回(2006年)の7.0%でした。
科目免除の有無で合格率は大きく違う
全体の合格率には、科目免除を受けた人も含まれています。受験科目数別に見ると、次のとおりです。
| 回(実施年) | 全科目受験者 | 2科目受験者 | 1科目受験者 |
|---|---|---|---|
| 第55回(2021年) | 14.9% | 10.6% | 59.1% |
| 第56回(2022年) | 17.7% | 17.2% | 65.6% |
| 第57回(2023年) | 23.0% | 22.0% | 70.8% |
| 第58回(2024年) | 11.2% | 10.4% | 61.3% |
| 第59回(2025年) | 13.9% | 10.3% | 67.2% |
(出典:税関「第55回〜第59回通関士試験の結果について」)
第59回の内訳は、全科目受験者5,584人のうち合格777人、2科目受験者561人のうち合格58人、1科目受験者177人のうち合格119人でした。受験者の大半は3科目すべてを受ける人で、その合格率は第59回で13.9%です。未経験から目指す場合は、この全科目受験者の数字が目安になります。
難しさの理由として、試験の仕組みから次の点が挙げられます。
- 3科目すべてで基準点(直近5回は原則として満点の60%以上)を超える必要があり、1科目でも下回ると不合格になる
- 「関税法等」は関税法・関税定率法・関税暫定措置法・外為法第6章など、範囲が広い
- 「通関実務」では、NACCSを使った輸出入申告の問題や計算問題が出題される
通関士の年収
通関士の賃金について、厚生労働省のjob tagは次の統計データを掲載しています。
| 項目 | 数値 | 出典 |
|---|---|---|
| 賃金(年収) | 583.3万円 | 令和7年賃金構造基本統計調査の結果を加工して作成 |
| 年齢 | 41.7歳 | 同上 |
| 1時間当たり賃金(一般労働者。残業代・賞与を含む) | 2,876円 | 同上 |
| ハローワークの求人賃金(月額) | 28.8万円 | 令和7年度 |
ただし、この数値は通関士だけを集計したものではありません。job tagの統計データは、通関士が属する職業分類(厚生労働省編職業分類の「他に分類されない法務・経営・文化芸術等の専門的職業」等)に対応する統計で、job tag自身も「必ずしもその職業のみの統計データを表しているものではありません」と注記しています。通関士の年収の目安として読むときは、この点に注意してください。
また、job tagによれば、通関士は通関業者の従業者として所属先の賃金体系が適用され、通関士手当を特別に支給している企業もあります。実際の待遇は勤務先によって異なるため、求人票で確認するのが確実です。
通関士に向いている人・キャリア、貿易実務検定との違い
向いている人
job tagの「しごと能力プロフィール」からは、通関士の仕事の特徴が読み取れます。
- 「仕事の性質」では「厳密さ、正確さ」が4.4、「ミスの影響度」が3.7(いずれも1〜5の尺度)と高い
- 「スキル」では「読解力」が4.1、「外国語を読む」が3.5である一方、「外国語で話す」は2.3(0〜7の尺度)
- 「仕事の性質」で「電子メール」4.9、「電話での会話」4.6と、社内外とのやりとりが多い
job tagは「通関業務で扱う書類は英語で書かれているので、英語力も必要である」とも説明しています。条文や数字を正確に扱うことが苦にならない人、英文のインボイスなどを読むことに抵抗がない人、荷主や税関と連絡を取りながら仕事を進めるのが得意な人に向いている仕事といえます。
キャリアの入り方
job tagによると、試験は実務経験があると一部免除されるため、通関業者に就職してから会社内や通関業者団体で行っている研修会、通信教育で勉強し、通関士の資格獲得を目指す人も多いとされています。受験資格の制限がないため、学生や他業種の社会人が先に合格してから通関業者に就職する道もあります。
job tagが「類似する職業」として挙げているのは、商社営業と貿易事務です。貿易事務の仕事内容は貿易事務とはで、商社の職種は商社の仕事内容で紹介しています。
貿易実務検定との違い
貿易の資格としてよく比べられるのが貿易実務検定です。両者は性格が大きく異なります。
| 項目 | 通関士試験 | 貿易実務検定 |
|---|---|---|
| 種類 | 国家試験(通関業法にもとづく) | 民間の検定試験 |
| 実施 | 各税関長(問題は財務大臣が決定) | 日本貿易実務検定協会® |
| 出題範囲 | 通関業法、関税法等、通関書類の作成と通関実務 | 契約・書類・決済・物流など貿易実務全般 |
| 合格後にできること | 通関業者で確認を受けると、通関士として通関書類の審査・記名を担える | 貿易実務の知識の証明 |
通関の専門家として通関業者で働きたいなら通関士、貿易事務や海外営業など貿易実務全般の知識を示したいなら貿易実務検定、というように目的で選ぶのが基本です。貿易実務検定のレベルや科目は貿易実務検定とはで詳しく解説しています。
よくある質問
Q. 通関士試験に受験資格はありますか?
ありません。第60回通関士試験の受験案内は、学歴、年齢、経歴、国籍等についての制限はなく、どなたでも受験できると明記しています。受験手数料は書面での出願が3,000円、NACCSでの出願が2,900円です。
Q. 試験に合格すれば、すぐに通関士として働けますか?
合格しただけでは通関士ではありません。通関業者に勤め、その通関業者が財務大臣に届け出て「確認」を受けたうえで、その通関業者の通関業務に従事して初めて通関士になります(通関業法第2条第4号、第31条)。退職などで通関業務に従事しなくなると通関士でなくなりますが、合格者として通関士となる資格は、どの税関の管轄区域でも有効です(第25条)。
Q. 通関士試験の合格率はどのくらいですか?
直近の第59回(2025年)は、受験者6,322人に対して合格者954人で、合格率15.1%でした。過去5回(第55〜59回)は12.4%〜24.2%の間で推移しています。3科目すべてを受験した人に限ると、第59回の合格率は13.9%です。
Q. 通関業者で働いていると、試験が免除されますか?
通算の従事期間に応じて一部の科目が免除されます。通関業者の通関業務などに5年以上従事すると「通関実務」が、15年以上従事すると「関税法等」と「通関実務」が免除されます(通関業法第24条)。ただし、判断を要しない単純な入力作業などの機械的事務は期間に含まれません。
まとめ
- 通関士とは、通関士試験に合格し、勤務先の通関業者を通じて財務大臣の確認を受け、通関業者の通関業務に従事する人。合格しただけでは「通関士」と名乗れない
- 通関業者には営業所ごとに通関士を置く義務があり(第13条)、通関士は輸出入申告書などの通関書類を審査・記名する(第14条)。全国の通関士は8,372人(2026年4月1日現在)
- 2026年の第60回試験は10月4日実施、合格発表は11月10日予定。科目は通関業法・関税法等・通関実務の3科目で、すべて合格基準を満たす必要がある
- 過去5回の合格率は12.4%〜24.2%。直近の第59回は15.1%、全科目受験者に限ると13.9%
- job tagの年収583.3万円は、通関士を含む職業分類の統計値。通関士だけの数字ではない点に注意
あわせて読みたい
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- フォワーダー・乙仲とは?通関業者との違いと物流業者の役割
- HSコードとは?
- 貿易実務検定とは?レベル・試験科目・通関士との違い
- 貿易事務とは?
参考・出典
- 税関「通関士試験」 https://www.customs.go.jp/tsukanshi/index.htm
- 税関「第60回通関士試験(令和8年)」 https://www.customs.go.jp/tsukanshi/60_shiken.htm
- 財務省「令和8年 第60回通関士試験受験案内」 https://www.customs.go.jp/tsukanshi/60_shiken/60_annai.pdf
- 税関「第59回通関士試験の結果について」 https://www.customs.go.jp/tsukanshi/59_shiken/59shiken_kekka.pdf
- 税関「第58回通関士試験の結果について」 https://www.customs.go.jp/tsukanshi/58_shiken/58shiken_kekka.pdf
- 税関「第57回通関士試験の結果について」 https://www.customs.go.jp/tsukanshi/57_shiken/57shiken_kekka.pdf
- 税関「第56回通関士試験の結果について」 https://www.customs.go.jp/tsukanshi/56_shiken/56shiken_kekka.pdf
- 税関「第55回通関士試験の結果について」 https://www.customs.go.jp/tsukanshi/55_shiken/55shiken_kekka.pdf
- 税関 カスタムスアンサー「8001 通関士制度の概要」 https://www.customs.go.jp/tetsuzuki/c-answer/shiken/8001_jr.htm
- 税関 カスタムスアンサー「8101 通関士の現況」 https://www.customs.go.jp/tetsuzuki/c-answer/shiken/8101_jr.htm
- 税関 カスタムスアンサー「9104 通関業者の現況」 https://www.customs.go.jp/tetsuzuki/c-answer/sonota/9104_jr.htm
- e-Gov法令検索「通関業法(昭和42年法律第122号)」 https://laws.e-gov.go.jp/law/342AC0000000122
- e-Gov法令検索「通関業法施行令(昭和42年政令第237号)」 https://laws.e-gov.go.jp/law/342CO0000000237
- 厚生労働省 職業情報提供サイト(job tag)「通関士」 https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/202
※本記事は2026年10月2日時点の公的情報にもとづく一般的な解説です。試験の日程・科目・合格基準などは変わることがあるため、受験の際は必ず税関の「通関士試験」ページで最新の情報をご確認ください。
(公開日:2026-10-02/貿易ラボ編集部)


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